ブランコ



児童公園のブランコは

ぼくらには低すぎるね

でもここから見あげるナラの木は

いつもより立派に見えるし

コスモスのかおりも

なんだか近いね


すべり台のてっぺんって

あんなに高かったっけ

こうして見あげると

あそこから滑りおりるのって

ちいさな子にしてみれば

ちょっとした冒険だよな


ねえ 勢いつけて

足を前に伸ばせば

ぼくらでも漕げるよ

見てて せえの



ほら







あ 正午の鐘だ

もうすぐチビどもがやってきて

どんぐりを拾ったり

落ち葉を集めたりするだろうね

そろそろこのブランコも

空けておかなきゃな


もうぼくらは若くないし

おたがいそれなりの傷もある

歩き疲れて腰かけた

ブランコだって似合わない

でも まだ漕ぎ出せることは

あるって思わない?


ねえ 腰の位置が低すぎて

不格好だけれど

そのぶん空は広く見えるね

できるなら残りの人生

ぼくはこんな風景を

きみと並んで見てたいな