DO NOT DISTURB



ベッドに鍵を放ってカーテンを開く

窓の外は黒い河と

誇らしげに青くともる電波塔

この下品な夜景を観るために建てられたホテルの

ビニールくさい中階の部屋が

ぼくらの隠れ家だった


灯りを消してぼくらは横たわる

ほの蒼くたよりない背中に口づけると

凍えた体温が唇にうつって

あなたの内に刻まれている

傷口のことが胸をかすめる


ふいに氷解したようにあなたは

石榴の果肉をむき出しにして

しがみついてくるけれど

どれほどつよく引き寄せても

どれだけふかく抱きくるんでも なぜ

なぜにあなたはあたたまらない


ねえ ぼくらはいつだって

うかれている星々からも

かわいている砂々からも

離れた中空をただよっているけれど

それは神々のうちのどんな顔したやつが

仕組んだことだろうね


嵐のあと シーツの浜辺には

無残に打ち上げられたクラゲが二匹と

628と打刻された鍵


世界とふたりを隔てる扉に

呪文を書いたプレートをかけて

ぼくらは身を寄せあい眠る

だれにも邪魔することなどできない

刹那のあわい夢を見て