春まかせ



ぼくはテツガクシャになれない

この形のないガイネンを

はっきりさせたり ととのえたりだなんて

なんとかヌスとか なんとかラテスみたいな

名前でもないし


ぼくはカガクシャにむかない

この目には見えぬフシギを

ぶんせきしたり せつめいしたりなど

しまいにガッカイではっぴょうだなんて

きんちょうするし


ましてやシンリガクシャになど

このえたいのしれぬカンジョウを

トウケイやブンルイで片づけるなんて

アタマやリセイでこねくりまわし

おのれの手に負えるだなんて


たとえばアイとよばれる

形のない 目にも見えない

えたいのしれぬものについて

ぼくはナゾをときあかすことも

うつくしくしめすこともできない


ただ日あたりのよい胸に埋め

毎日欠かさず水をやる

やれることなどそのていど

そこから先は春まかせ

芽吹き ほころび 花こぼれ

やがてその実をむすぶときまで