春れんさ


(「命が危ない 311人詩集」掲載)



都会の隅にあるタンポポ畑に

北風の便りが届きました

遠くの街のメジロたちが今

蜜不足に悩んでいると


タンポポたちはすぐにでも

飛んで行きたかったけれど

そうすることができません

嗚呼 この花弁が羽だったなら!


タンポポたちはあまりの無力さに

じぶんを責めながら

せめてもとせいいっぱい

咲くほかはありませんでした


そこにミツバチの群れがやってきて

タンポポたちの蜜を吸いました

ミツバチはそれを巣に持ち帰り

ひとまず貯蔵庫へ


そこへ一匹のクマがやってきて

ハチミツを分けてくれと言いました

いいから全部持って行きなと

女王蜂の一声


クマは袋いっぱいの蜜をしょって

湿原へと向かい

そこで旅支度をしている

マナヅルの群れに託しました


マナヅルの群れは北へ北へ飛び

遠い街のメジロたちへ

蜜を届けました

アリガトウ アリガトウ


都会の隅に咲くタンポポたちは

そんなことはつゆ知らず

今日も嘆いています

わたしたちに何ができるの・・・・・・


そうだ 春の終わりになれば

わたしたちは綿毛となり

南から吹く風に乗って

メジロたちに会えるかも


だから今はただ

日々をけんめいに咲こう

いつの日かあの街へ

春を届けにゆくために