北極星が堕ちた日



北極星が堕ちた日

だれも夜空を見てはいなかった

人々はテレビジヨンかスマアトフオンか

パアソナルコンピユウタアを見ていた

ひとつの星の運命よりも

株価やグラビアや芸能人の不倫や

自分宛のメツセエジを見ることに

忙しかったから


北極星が堕ちた日

だれもそのことに気づかなかった

人々はランキングかグルメリポオトか

ラクシテヤセルホウホウを見ていた

ひとつの星の終焉よりも

人気やトレンドや最先端の情報や

自分に役立つネタを得ることに

夢中だったから


北極星が堕ちる瞬間を

だれもじかに見てはいなかった

翌日ワイドシヨウで取り上げられて

人々は大騒ぎしはじめた

輝いていたものが堕ちたならば

見過ごしてはおけない

退屈な日々の憂さ晴らしをする

絶好のチヤンスだ


しくじったヤツには容赦なく

袋叩きの制裁を加える

「ツイニ堕チタカ 北極星ノヤツ」と

死骸に群がるハイエナのように

ハアハアと舌を並べて

無慈悲な目で見下ろして

最新のエサに向かってこう言う

「イチバンボシ見イツケタ」


北極星が堕ちた日

だれも功績を讃えはしなかった

方角の拠り所としての長きつとめを

ねぎらうこともなく

ただ堕ちたという事実だけに

みな興奮し沸き上がった

いつか太陽が堕ちる日にもぼくらは

面白がってうかれるのだろう