骨見山 東幕下六十枚目 骨見山は冴えない力士 骨が見えるほど痩せているので 親方がそう四股名をつけた だれより稽古熱心で 気合いじゅうぶん立ち合うが また土俵下に投げられて 観客からの野次をあびる 骨見山は生まれつき 肉のつきにくい体質で それでも相撲が好きだから 不抜の精神でやってきた 骨見山の母は病室で 息子の勝利を祈っている 彼は病床の母のために なんとか勝ち名乗りを受けたい 骨見山の子は学校で ひどいイジメにあっていて 我が子に勇気をやるためにも なんとか白星を飾りたい たたかうものはだれだって 人知れぬ事情を背負っていて なにも知らない野次馬だけが 勝手な罵声をあびせている 黒星続きの千秋楽 骨見山は東から土俵にあがる 立ち合い頭から突っ込んで 俵ぎわいっぱいもつれ合うと 両者ともども客席へ落ち 行司がゆっくり軍配を 日が昇る方へあげた