（「詩とファンタジー（冬思号）掲載作」） 　　　怪獣 今夜は寒いから 暖炉に薪をくべようね 安物の毛布しかないけれど いっしょにくるまって 火を見ながら話そう 怪獣だからといって 遠慮はいらないさ ほら　かじかんだ尻尾も巻いて 毛布の中にしまってごらん おまえは姿の醜さを なげいてばかりいるけれど そのごつごつした皮の内にある 清らかさをおれは知ってる 角や牙が尖っているのも 吠えたりするのも　ほんとうは 傷つきやすさを隠すためだろ おまえは醜くなんかないよ おれは案外カッコイイと思うし 子どもたちからも人気あるぜ ほんとうに醜いのはね 見た目でおまえを誤解している 人間たちの方さ おまえといると ふしぎと落ちつくんだよ こうして寄りそっていたら 血のぬくみがうつってきて 暖炉よりあったかいな ねえ　今夜は泊っていきなよ 話し相手になっておくれよ おれの心に棲みついてる 醜さに負けそうな怪獣と ともだちになってほしいんだ