感じながらゆく人



感じながらゆく人は

生きているのがつらくなる

踏みつぶされたつくしを見ても

かなしくなってしまうから


感じながらゆく人の

ひとみは疲れはてている

名もなきちいさな星を見ても

なみだこぼれてしまうから


感じやすいこころなんて

いっそ捨ててしまいたいと

あなたはときどきやけになる

ささいなことでふるえる胸が

いちいち歩みをはばむので

わずらわしくてしかたなく


感じながらゆく人は

いまにもこわれてしまいそう

だれかの傷口にふれるたび

おなじ痛みをあじわって


感じすぎてしまうときは

死にたくさえなっている

瑣末なことで苦しむじぶんが

おろかなやつに思われて


けれど潤んだひとみだけが 

星々のさみしさに気づき 

とぎすまされた鼓膜だけが

たおれたつくしの声を聴きとり 

それゆえ悩めるあなたこそ

人にやさしくなれるのだ 


だから誰より落ち込んで 

ひとりの夜がきつくても 

粗野でうつろな人々から 

大げさなやつと笑われても 

ひりりと疼くたましいを

どうか捨てたりはしないで


その感受性はきっと

かなしみに深く沈む分

よろこびも深く得られるよう

かみさまがくれた贈りもの


感じながらゆく人よ

ぼくはあなたが好きだ

泣く者を笑うやつらより

星やつくしに泣くあなたが