恋の過程 はじめてあなたを見かけた日 わたしの目は釘づけられた はじめてあなたに話しかけられた日 わたしの頬はこわばった あなたはとおいひとで その声は天使のようだった 黒い髪も　小さな耳も　きゃしゃな肩も 神のたからもののようだった はじめてあなたと出かけた日 わたしの足はぎこちなかった はじめてあなたと手をつないだ日 わたしの胸はふるえあがった よろこびの血が 体じゅうを駈けめぐり もっと見たい　もっと知りたい　もっと触れたいと あなたのすべてをもとめた それはごくまっとうな 恋の過程のはずだった ぼくらはまじめに 恋をしてきたはずだったのに やがてあなたと会うときに わたしは緊張しなくなった 体が異常をきたさなくなり わたしは楽になった あなたはちかいひとで その存在にわたしは慣れた やわらかな胸も　細い腰も　小粒なくるぶしも わたしのもののように思われた そのうち嫉妬をおぼえた まるで権利であるかのように あなたをしばりつけ 自由をゆるせなくなった あなたはわたしのひとで はみ出すものをすべて憎んだ その意志も　その心も　その耀きも だれに触れさせてなるものかと それをごくまっとうな 愛だとしんじて ぼくらはしんけんに 愛しあっているとばかりに いつからわたしはこんなにも 傲慢になってしまったのだろう 出会った頃の こわばりやふるえやよろこびを 愛の名のもとに失って 見ているだけでじゅうぶんだった 謙虚さまでも失って あなたは今でも 天使であるのに だれよりもたいせつな にんげんであるのに