くちなし



くちなしの花が

咲いていましたね

わたしたちが出会ってまだ

名前も知らなかったころ


あれから幾度も逢瀬をかさね

うちとけあえてきた今も

交わす言葉は敬語まじりで

つなぎあう手もぎこちなく


たがいを思いやるあまり

すなおにわがままも言いあえず

甘え方のわからぬ者どうし

いつまでも不慣れな恋ですね


浮き世へ心を閉ざしてきた

癖がぬけないのかもしれません

熟しても割れることのない

くちなしの実のように


似すぎてるふたりですけれど

一緒に歩いてゆきませんか

へたくそな想い方ですけれど

そばにいてほしいのです


あなたと出会うまでわたし

この星のどこにも

居心地のいい場所なんてなかった