マーメイド 小さな丸い舞台の上 青いスポットライトに照らされて きみはポールダンスを踊る しなやかな柔軟と 鍛え上げた筋肉で まるで深海を舞う マーメイドのように 磨き上げられたクロムメッキの筒は きみの得意なスタティックポール 今日のスピンにはキレがある 国際大会に照準をあて この半年間たゆまず 前腕筋の強化につとめてきた たまものだろう 地下の店内できみは踊る ライトが照らす埃の中 汚らわしく卑猥な視線と アルコールくさい喝采を浴びて きみの夢などだれも知らない きみの技術などだれも解さない 下卑た酒場の真ん中で ショーの時間が終わったら いっしょに帰ろう いつものように足をおさえてやるから もう少し腹筋をつけようか だいじょうぶ　 きみが夢にたどり着くまで とことん付き合うと決めたんだ たとえ今は小さな舞台で 醜い視線に晒されていても この深い海の底から いつか世界へと漕ぎ出そう だいじょうぶだよ　マーメイド きみはだれより 上達してる