水辺で待つひと　 喧騒を離れた公園の池で 釣りをしている人々がいる 彼らはゆるやかな時の中で 魚がかかるのを待っている 望遠レンズを覗きこんで 照準を合わせている人々がいる 彼らも辛抱強く待っている 水鳥の羽ばたく瞬間を 外回りの途中で立ち寄ったぼくも しばしあやかってみる 水辺の人々が胸に宿す 待つという贅沢に 都会暮らしの中でぼくらは 予定外のことをに腹を立てたり 遅れる電車に苛立ったり つい時を治めたがるけれど 水辺にいると人は 身をゆだねてしまうのだろう 魚や鳥の意思に寄り添い みずからは従う側として 待つという行為は けなげな愛のあかし たいせつな相手の自由を ねじ曲げないという誓い ボートをぎこちなく漕ぎながら 池に浮かぶ若者たちも 待ち合っているのかもしれない 相手の恋が動きだすのを