王国 窓から射しこむ ほの蒼い月光に照らされて 荒れたシーツの上 滅んだ王国がよこたわる 部屋にはさっきまでの たたかいの熱気と 交わした汗の 香気が満ちる やわらかな丘陵は 息を吸うと かすかに隆起し 息を吐くと なだらかに沈み その周期は 潮の満ち引きに似て 王国はやすらかに 滅んでいる どこか遠くから サイレンの音がして ぼくは王国の耳をふさぐ 朝焼けが空を染めれば ふたたびあなたは目を開けて 一国の王女として 立ち上がるのだろう だからもうひととき 眠っているがいい うつくしく滅びきった 亡国のままで