PACK−MAN



あなたが道々に置いていった

忘れがたい過去のひと粒ひと粒など

ぼくが片はしから食べてやる

振り向いてもその道すじには

いやな思い出もなにもない


あなたが道々にこぼしていった

抱えきれぬ思いのひと粒ひと粒も

ぼくが呑みこんでみせるから

あなたはもう振り向かずに

前だけをみて歩いてほしい


なみだ味の粒はしょっぱく

つらい境遇の粒はからく

失った恋の粒はにがく

宿命の粒は大きすぎて

のどにつっかえそうになるけれど


裂けるほどに大口をひらいて

のこらず平らげてみせるから

重たくなったものは捨てて

少しでも身軽になって

未来へと歩いてゆくんだ


心ないものたちが包囲網をはり

こぞって捕えにこようとも

ぼくは決してつかまりなどしない

たとえ命を奪われたって

愛のため二度はよみがえる


あなたのゆく道に立ちはだかる

やっかいで邪魔なひと粒ひと粒も

先回りして喰ってやる

悲しみを平らげるごとにぼくら

次のステージへとすすむんだ


いつの日か 

はっさくのような腹の中で 

幾多の苦しみを消化したら

ぼくは その名に恥じぬよう

あなたを包むひとになる