使者



土手に腰かけて笹笛を吹く

そんな特技あったんだね? と

隣できみは不思議そうに見ている

いや 特技なんて言えないけど

これだけは子どものころ

爺ちゃんに教わったんだ


日はかたむきはじめ

並ぶ二人の背中の方から

揺れる川面を照らしている

白い水鳥が一羽 着水して

笛の音色を気にしてか

小首をかしげてこっちを見ている


ねえ おなかすかない?

いつの間にかきみはその手に

源氏パイを握って微笑んでいる

いつだってきみは手品のように

四次元に通じるそのカバンから

好きなお菓子を取り出せるんだ


うん 食べようか

笹の葉をもったままの手で

源氏パイに伸ばしたら

足元の芝に あざやかに

ハートを射ぬく矢のような

影がうつった


川面に浮かぶ白い羽のやつが

いたずらな顔でこっちを見ている