つり橋の上 サンダル履きの足を野菜売り場の風が冷やす レタス　卵　コーヒー　６枚切りの食パン それからレジの脇にある乾電池をかごに入れる 前でチューインガムを宝物みたいに握りしめる子供 シールを貼ってもらうとすぐに包みを開ける 母親は両手に下げた袋を一度置いてから エプロンのポケットに手を入れ　自転車の鍵を探す 俺は小銭を数え　主婦の偉大さを感じながら 離れたおふくろを想った 一人暮らしも長くなって スーパーの袋をさげて歩くことも今は抵抗を感じない よく晴れた午後には商店街まで足を伸ばして 街ゆく人々の中にもまれてみたくなる 人のよさそうな酒屋のおやじがビールケースを運ぶ 愛想の悪い金物屋のじいさんも洗面器の影で汗をふく 働く人々はいつも何かを背負っているのだろう 少なくとも今の俺達よりはるかに重い何かを･･････ 俺は離れた親父を想った いたたまれない気持ちを抑えきれず 通りを抜け　飛行機雲をたどるように歩くと 昼休みの自由に包まれる　小学校のグランド 友達に泣かされている子供　独りブランコに乗る子供 大人がノスタルジーに浸るほど　生易しい世界じゃない 子供達は子供達なりの 残酷な倫理の中で生きている 傷つけ合い　取り残され　罪のない情熱のために 時には親を哀しませながら･･････ 俺はいくつもの想いにかき乱されている どこを歩いていてもつり橋を渡っているようだ ずっと前から胸の中に存在している対象は 憧れている大人達と許せない大人達 憧れている子供達と許してあげたい子供達 どこまで自分をなくさずにいられるだろう･･････ 俺はつり橋の上　風に吹かれている 風のような大人になりたい