運命の神 火の神は世のあかりをつかさどり 水の神は命のみなもとをたたえ 大地の神は木々や花々を愛で この世は幾多の神々によって支えられ わたしとてときに祈りもするが あなたを暗闇に産み落とした神だけは 許さない 感情をころしてあなたは 色彩のない真昼をやり過ごす 感触をころしてあなたは 奈落の真夜に身をゆだねる ほんとうは現実をころしたいのに 自分ばかりをころしてあなたは 朝のおとずれをおそれている 宿命と呼んで片づけるには 残酷すぎる日常と 天命と呼んで受け入れるには あまりに理不尽な十字架を 背負うあなたの代わりにわたしは その神のみぞおちを百ぺん刺した それでもわたしは あなたの光にはなれなかった 返り血を浴びただけの なさけない男にすぎなかった それからはぎらつく刃の先を おのれの左胸に向けている そんな惨めなわたしが あなたに言えることなんて たったひとつしかないのです 地獄を背負い　それでも今 生きることを選んでいるならば あなたはかぎりなくうつくしい だれがなんと言おうとも ぜったいに ぜったいにうつくしい 神さまよりもあなたが好きだ