（「詩と思想」2017年3月号掲載） 　　　　　ゼツメツ 早朝　川べりを散歩していたら 白い水鳥が一羽いた 「おはようございます」と声をかけると 「おハヨう」と返してくる くちばしの形からしてコウノトリだ 「野生のはてっきり絶滅したものと」 そう言うとコウノトリは 「ゼツメツなんてするもんか よくサガせってイっといてよ」 と不満をあらわにして羽毛を逆立てる 「ホロんだなんてイわないでさ ミつからないってイってよ」 なんだかほっとして 「それはよかったです」と言うと コウノトリは主張する 「ダイイチ　あんたらはさ うちらをナきモノにして どうやってアカちゃんサズかるわけ？ うちらがハコんでるってのにさ まさかジブンらでツクってるとでも カンチガいしてない？」 勘違いしてた 「アブラをウってるバアイじゃない」 コウノトリは翼を広げ 「アカちゃんトドけなきゃ」 と空へ舞い上がる 「どこへですか？」とたずねると コウノトリは長い首をくるりと向け 「アイのあるところ」と言い残して 朝もやの中へ消えていった 人間を絶滅させぬために